作法

日本とサウジアラビアでは、人々の暮し方が違う様に、挨拶や食事のしかたなどについても大きな違いがあります。ここでは、サウジ人の作法、特に挨拶のしかたについてみなさんに伝えたいと思います。

初対面の人と会ったとき、日本人はお辞儀をしますね。しかし、サウジアラビアにはお辞儀をするという習慣がありません。彼らは初対面の場合、「アッサラーム・アライクム(こんにちは)」と言いながら右手で握手をするのです。僕達がサウジアラビアを訪問した時も、挨拶をするときは握手をしました。

向こうではサウジ人の高校生とも交流したのですが、僕達が空港に着くとサウジ人の学生が一列に並んで待っていて、その一人一人と握手をするものだから、20人近い学生達が待っていてくれたヤンブーの空港では挨拶するだけで結構エネルギーを使いました。

でも、お互いの肌が直接触れるので親近感が湧き、握手をするという挨拶のしかたは、日本のお辞儀よりも親しげに感じました。

この、握手するという挨拶はどこででも使えます。例えば、お店で物を買った時です。お店と言っても、普通のスーパーではなく「スーク」と呼ばれる商店街なのですが、ここでは日本と違って値切ることができます。値切って交渉が成立し、代金を払って品物を受け取った後、店員さんとお互いに「シュクラン(ありがとう)」と言い、握手をするのです。

日本では、スーパーはもちろん商店街の八百屋や魚屋でも、毎日のように行っている店でなければ店員さんと親しくはならないし、親しくなっても握手などしないでしょう。ところがサウジアラビアでは、初めての客ともしっかり握手をするのです。

僕はサウジアラビアのジェッダのスークにある貴金属店に行き、NHKのラジオ講座で覚えた、うさんくさいアラビヤ語とアラビヤ数字で交渉して15%ほど値切ってペンダントを買いましたが、店主のおじさんは怪しげな日本人の少年相手にちゃんと握手をしてくれました。僕はサウジ人がとてもフレンドリーな人達だという印象を受けました。

さらに、「握手」は自分より目上の人と会った時にも使えます。これは相手が博士だろうが王族だろうが関係ありません。身分によらず、「握手」は共通です。今回のサウジ訪問で僕達は5人の王族に会いましたが、みんな快く握手してくれました。

しかし、サウジアラビアではみんながみんな握手をするというわけではありません。親しい間柄になると、挨拶はお互いに抱き合って右頬を1回、そして左頬を数回くっつけるという形になります。そしてその時に口でキスの音を出すのです。

日本人からすれば、恋仲の男女がしそうな挨拶で、街中でこんなことをすれば周りの人から変な目で見られるでしょうが、サウジ人は男同士でも普通にこの挨拶をします。左頬をくっつける回数は相手との親しさによって違うらしく、僕が見たものでは兄弟同士で4回、知人同士で3回でした。

また、偉い人、例えば王族に会った時、サウジ人は偉い人の肩にキスをします。王族との会見に臨んだとき、前に書いたように僕達日本人は握手をしたのですが、僕達と同行したサウジ人学生はみんなそうしていました。

今までサウジアラビアにおける挨拶のしかたについて書いてきましたが、全体的にお互いの体が接触するものが多いようです。余談ですがサウジアラビアでは大人の男同士でも仲の良い間柄なら手をつなぎます。僕も実際にアル・マディーナ(イスラームの聖地 メディナ)の空港で、手をつないで歩いている警備の兵士二人を見ました。でもさすがに仕事中ではなかったようです。

このように、日本とサウジアラビアでは全く違った習慣があります。みなさんもサウジアラビアに行き、向こうでほんの少しでもサウジ人と話す機会があったら、別れ際に「シュクラン」と言いながら右手を差し出してみて下さい。きっと相手のサウジ人はニコッと笑いながら力強く握手してくれるでしょう。