家庭料理

我々はサウジ滞在の間、基本的には朝、昼、晩の三食サウジ料理を食べていました。 客人ということもあり、豪奢な食事を毎回取っていたわけです。中でも、サウジアラビアの歓待料理の基本メニューである羊の丸焼きは、いったい何回出たのか忘れてしまうほど食べました。一体この訪問の最中に、我々の為だけに何匹の羊が丸焼きにされたのか心配してしまうほどです。

そして羊の丸焼きに限らず、出てきた料理の全てが美味しく、さらに量も一食どころか、一日の全ての食事をまかなえてしまうほどの量が毎回用意されている為、二週間の間日本料理を懐かしむ余裕さえありませんでした。今となっては、あのいつでも満腹であるという嬉しい悲鳴が懐かしくさえあります。

しかし、私にとってサウジで食べた料理の中で一番美味しかった料理、印象に残っている料理を挙げろと言われれば、それは豪勢な歓待料理でも、迫力満点の羊の丸焼きでも無く、ジェッダのサウジ地積機構を見学した際、ムハンマド・アスアド・タウフィーク博士に主催していただいた昼食会で食べた、サウジアラビアの家庭料理です。

歓待料理と大きく違うところは、野菜がふんだんに使われていること、味付けが強くないこと、そして煮込み料理が多いことでした。どれも大変に美味しいのですが、どこかホッとする懐かしい感じの味がしたことを今でも覚えています。

中でも別格だったのが、茄子とトマトと牛肉の煮込み料理でした。 日本の茄子とは違い、サッカーボールほどの大きさの茄子が輪切りにして重ねてあり、その間にトマトと牛肉を挟んで煮込んであるのですが、巨大な茄子が肉とトマトの旨みを全部吸い込んでいて、噛むとその凝縮された旨みが口の中に広がるという反則的な料理でした。

歓待料理はこれから沢山食べることになるだろうから、と博士が逆に普段サウジの人達が普通に食べている料理を用意していただいた訳ですが、後になってこの時の博士の先見の明に気づかされました。

確かに、我々は行く先々で丁重な歓待を受け、豪華な歓待料理を食べ続けたのです。もし、この時にサウジの家庭料理を食べていなかったら、我々のサウジ料理のイメージは歓待料理だけから得たイメージになってしまっていたでしょう。これは、日本料理でいえば寿司やすき焼きだけを食べまわって、日本料理を知ったつもりになっているのと同じことです。

もし、またサウジに行くことがあれば、今度はサウジの家庭で食べられているような料理や町の普通のレストランで出される料理を食べ、客人ではなく、友人として素のサウジに触れたいと思っています。