サウディアラビア王国の医療と社会福祉

サウディアラビア王国は、国民ならびに巡礼の季節にアッラーの家を訪れる人々に対し、最高水準の医療サービスを提供するため、医療と社会福祉分野において大胆な政策を取っています。

王国の病院、医療センターは、最先端の外科手術の分野においても驚くべき成果を達成しています。サウディアラビアの医師たちは、僅かのミスも許されない心臓、肝臓、腎臓などの臓器移植手術に優れた実績をもっています。

サウディアラビア王国の労働・社会問題省は、同省のサービスを必要としている国民のために社会福祉計画を優先して実施しています。同省がとりわけ心がけているのは、社会に対応できない社会的弱者、精神障害者、身体障害者たちに対する配慮であり、こうした人たちが自分自身の力によって障害を克服できるよう、適切な教育施設を設けるとともに、教育、訓練、様々な支援を提供しています。

医療サービス

サウディアラビア保健省は、全国の医療サービス業務を担当しています。同省の他に医療サービスを提供している政府機関としては、国防・航空省、国家警備隊、内務省、教育省、女子教育庁、青年福祉庁、社会保健事業団がありますが、それらは、それぞれの省庁の職員と家族を対象とし、各自が設立した病院や医療センターで医療サービスを提供しています。

王国の医療サービスの際立った特徴は、無料の総合的医療サービスとその質の高さにあります。この無料サービスは、国民ばかりでなく、在留外国人や短期滞在者も受けることができます。

軍関係の病院の中には、先端の医療技術分野において、世界的にも名の通った病院があります。

保健省は、医療全般のサービスを管理すると同時に、外国で治療を受ける国民の医療も担当しています。外国で治療を受ける人たちは、王国内の医療サービスの充実と発展とともに、ここ数年減少しています。

保健省は、医療分野の人材育成と訓練にも関心を払っており、44の男女別の医学専門の研修所を設立しました。これら研修所の中には専門学校に昇格したものもあり、王国の諸都市において13校の保健・医学専門学校が開校しています。

これらに加え、サウディアラビアの総合大学には9つの医学部があります。

サウディアラビア王国の「赤新月社」は、1963年に設立されました。赤新月社は、緊急医療サービスと巡礼月の医療サービスを担当しています。

王国内の赤新月社の支部は11、センターは155に達しており、職員数は、医師、薬剤師、緊急医療スタッフを含めて2,791人に達しています。また、救急車648台備えています。

次の数字は、王国の医療サービスの現状を示しています。

  1. 1997年の王国の病院数は、303に達し、そのうち、保健省所轄のものが180、私立病院が84となっています。私立病院は、国からの支援を受けており、国からの借入金は、病院建設費、医療設備費などの費用の50%に達しています。残り39の病院は、保健省以外の政府機関が管轄している病院です。これらの病院は、2,348にのぼる保健センターを補佐していますが、内1,737のセンターは保健省に所属しています。
  2. 王国の全病院のベッド総数は、4万4,213にまで増加し、国民1,000人当りのベッド数は、2.34に達しています。
  3. 王国の全医療機関で働く医師(男女)は、3万1,585人、看護夫と看護婦は、6万2,899人、医療を補助する技術スタッフは、3万5,227人に達しています。また、医師一人当りに対する国民人口の割合は601人となっています。
  4. 王国には専門病院があります。リヤードのファイサル国王専門病院には、付属機関として医療研究センター、ガン研究センターがあります。また、眼科専門の病院として、ハーリド国王眼科専門病院があります。一般の病院では治療が困難と見られる患者は、これらの専門病院に回され、そこで治療を受けます。
  5. 王国にはサウディ臓器移植専門医療センターがあります。同医療センターは、1987年の設立から1997年末までの期間に2,299件の腎臓、144件の肝臓、75件の心臓、7,743件の角膜の移植、そして132件の心臓弁膜手術をおこないました。
  6. 現在、リヤードで建設が進められているファハド国王医療タウンは、間もなく竣工を迎えますが、この医療タウンは、ベッド数459の総合病院、ベッド数246の小児病院、ベッド数236の産院、腎臓・医療リハビリ・センターを有するきわめて大規模な医療施設です。また、リヤード郊外にはベッド数300の精神病院があります。
  7. 王国には他の国にも見られない特別の遠隔地医療サービスがあります。医療機器を装備した医療航空隊が、緊急医療と負傷者や患者の病院への輸送をおこなっています。同航空隊は、軍の医療サービス局の管轄下にあります。保有航空機数は22機で、年間、数千人の患者や負傷者の医療サービスにあたっています。
  8. 王国の予防接種率は、世界的にも高いものであり、結核の予防接種率は93.7%、ウィルス性肝炎は94%、麻疹は93%、三種混合ワクチンと小児麻痺は95%に達しています。

 福祉と社会開発

王国は、福祉と社会開発プログラムを重視しています。これを受けて、労働・社会問題省は、幼児、母親、非行青少年、孤児、身体障害者の福祉サービスを充実させ、リハビリ訓練など、きめ細かに対応しています。

また、社会的、身体的、経済的な問題を抱えている国民には、そうした人たちが問題を克服して人としての尊厳を保つことができる生活が送れるよう多岐にわたり十分な援助を提供しています。

同省が実施する社会開発プログラムは、国民の自助努力によって経済的・社会的な生活水準を上げることを目的としています。

国の福祉を必要とする人たちにはサービスが提供されていますが、その一方、王国内に187に及ぶ慈善団体、活発な活動を展開しています。そのうちの20が婦人を主体とした慈善団体であり、社会福祉分野で大きな役割を果たしています。これらの団体は、幼児や母親に対するケア・プログラムを実行するとともに、保育園の役割も担っています。王国は、これらの慈善団体の運営を財政的、技術的に支援し、教育、リハビリ、文化などの社会プログラムの実施を助けるとともに、とりわけ、身体障害者や高齢者にはよりきめ細かい介護を提供できるよう支援しています。また、住宅建設や改築などに関連した社会プログラムも実施し、困窮している人たちのために慈善の家を建設しています。

こうした保健、医療サービスを提供している慈善団体の1998年の収入は、8億1,140リヤール、支出は、6億2,250リヤールに達しています。

労働・社会問題省が慈善団体に提供した財政援助は、1999年には5,303万リヤールに達しました。

労働・社会問題省の福祉、社会開発事業に関する数字と情報は下記の通りです。

  1. 同省が管轄している、設備、器機が整備されている社会福祉施設は77に達しています。
  2. 王国の主要都市にある5つの社会福祉施設を通じ、同省は幼児ケアのサービスを提供しています。ここでは、特別のケアのサービスを提供しています。ここでは、特別のケアを必要とする、生まれたばかりの赤ん坊から6歳までの児童を対象として、社会的、精神的環境への適応能力を身につけることを目的とした最適の教育が施されています。この施設では、家族のいない幼児を対象として、教育・レクレーションプログラムが実施され、同省が親代わりの役割を果たしています。
  3. 年齢が6歳に達した孤児、服役囚や疾病に苦しめられている人たちや仕事ができない身体障害者そして家庭で健全な社会教育ができない親たちの子供のために16の社会福祉施設を運営しています。そのうち、11の施設は、6歳から12歳までの子供たちを対象としています。理想的な社会教育のための公共団体が2つあり、これらの機関は、13歳から18歳までの青少年を受け入れています。女子のための社会福祉施設が3つあり、6歳以上の子供たちを受け入れています。この施設は、女の子が主婦として互いに助け合う家庭生活が営めるようになるまでの成長期間を支援しています。こうした子供たちが成長して結婚する時には、2万リヤールの結婚資金が一度のみ給付されます。
  4. 同省は、孤児や、特殊な事情を抱えている幼児への養護政策として、「里親プログラム」を実施しています。同省は、一定の社会的基準に基づいて、これらの子供たちのために里親の家族を選定します。子供たちの状況は、同省の担当機関が把握し、里親を適切に指導しています。同省は、毎月、里親の家族に給付金を支払っています。給付金は、子供たちが就学年齢に達したとき増額されます。けれども、里親を申し出るサウディアラビアの家族のほんどは、ボランティアの精神に基づいてこれらの子供たちの世話を申し出ています。アッラーの許での善行を望んで里親になっているのです。
  5. 同省は、高齢者福祉を10ヵ所の施設においておこなっています。これらの施設は、老人、介護を必要とする人たち、病状が安定している精神病患者たちのために健康や精神面で可能な限りのケアをおこなうとともに、一人一人の状況にふさわしい宗教的な文化行事やレクレーションを実施しています。
  6. 同省は、「身体障害者の職業訓練・社会福祉プロジェクト」を通して、身体障害者の社会教育をおこなっています。こうしたプロジェクトの対象なる人々は、王国内の各地に散在しており年齢も社会階層も多岐にわたっています。リヤードとターイフの小児麻痺の子供たちのための2つの国立養護院が、養護を必要とする子供たちに総合的なケアを提供しています。職業訓練センターが5つあり、そのうち2つが女子用のセンターです。重度の身体障害者のための社会復帰リハビリセンターが3つあります。その他に9つの総合リハビリセンターがあります。身体障害者の家族が自分たち自身で身体に障害をもった息子や娘たちを養護したいと希望する場合、同省は、これらの家族を支援します。身体障害者や小児麻痺の子供たち4万5,733人に対し、同省は、1999年に2億1,000万リヤールの財政支出をおこないました。
  7. 同省は、7歳から18歳までの非行青少年対策として、社会的意識を育てる5つの施設を運営しています。更正プログラムとしては、7つの施設で教導と社会適応の指導をおこなっています。女子の更正は、3つの公共団体で行われています。同省は、社会・意識・文化プログラム、職業訓練プログラム、スポーツ活動をこれらの施設と公共団体で実施しています。教育省と女子教育庁もまた、教育プログラムを3段階に分けて実施しています。
  8. 社会開発プログラムは、農村部の16の社会開発センターと、都市部の7つの社会サービスセンターで実施されています。社会開発センターのサービスが行き届かない地域では、58の社会開発地方委員会が社会開発センターに代わってプログラムを実行しています。労働・社会問題省は、これらのセンターの運営を、教育省、保健省、農業・水資源省、都市・村落省などと協力しておこなっています。
  9. 労働・社会問題省は、生活共同組合を支援しています。生活共同組合の数は162に達していますが、その目的は、農業、消費、社会サービスなど多岐にわたっています。
  10. 社会保険は、政府が重視している社会福祉です。労働・社会問題省の社会保険局が担当し、本部と76の支部を通じて資格調査と有資格者への給付をおこなっています。給付には定期給付、一時給付の2種類があり、福祉や援助を必要としている国民を支援しています。受給対象者は、2つのグループに分かれています。
    1. 生活補助受給者グループ : 対象者は、孤児、全機能障害により就業できない人々、身寄りのない女性です。
    2. 支援金受給者グループ : 対象者は、一部機能障害により就労できない人たち、服役囚の家族、罹災者、扶養義務が履行されていない家族です。この他の支援としては、緊急給付、複数回給付、障害者給付があります。

社会保険の年間予算割当は、1993年以降、15億リヤールから27億リヤールに増額されました。

以上がサウディアラビア王国が実施している社会福祉プログラムの概要ですが、王国の社会福祉プログラムは、社会的な相互扶助を説いている正当なイスラム教の教えに基づいています。この精神は、社会福祉に割当てられる予算の増加という形で現れています。1990年には5億3,300万リヤールだった社会福祉の予算額は、1996年には7億2,400万リヤールまで増額されました。