サウディアラビア王国の環境保護とその指導的役割興

サウディアラビア王国は、環境保全と開発および、環境汚染の防止に最大の関心を払っています。イスラム教は、環境への配慮、環境破壊防止、自然資源の無駄のない有効利用を提唱していますが、王国の環境政策は、この教えに基づいて策定されています。

王国の統治基本法第32条は、環境保護について、「国家は、環境保全・保護・開発と環境汚染防止の措置に努める」と規定しています。

この規定を実行するため、国家は、法令を公布し、政府関係省庁機関が環境保護政策を実行する上での責任のあり方を明確に指示しています。

サウディアラビア王国では、開発プログラムやプロジェクトを計画・実施する場合、環境に悪影響を与えないことを保証した上で進める方針が貫かれ、均衡の取れた、相互補完的政策が実行されています。

王国はこの方針に基づき、開発プログラムとそれに必要とされる環境保護との均衡を重視しつつ、開発を計画し、実施する機関を設立しました。これらの機関の最高機関が、「環境閣僚委員会」であり、議長は、第二副首相兼国防・航空相兼監察長官のスルターン・ビン・アブドルアジーズ殿下がつとめ、環境問題についてこれら機関と政府省庁間の調整をおこなっています。

王国は、国内の自然資源の保全に努力を傾注しています。とりわけ、絶滅の危機に瀕している陸棲、水棲の希少動物、植物、鳥類の保護・育成に力を注いでいます。

二聖モスクの守護者ファハド・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード国王は、1986年、勅令を公布し、「野生動物保護・育成国家委員会」の設立を命じました。同委員会の理事会理事長には、第二副首相兼国防・航空相兼観察長官兼環境保護最高委員会委員長のスルターン・ビン・アブドルアジーズ殿下が任命され、外務大臣のサウード・ファイサル殿下が代表委員を務めています。同委員会は、設立以来、自然環境体系の崩壊を食い止めるため、効果的かつ、実行のある最良の対処システムを適用しています。多様な生物の保護は、国内基準と国際基準に基づいて確実に実施されています。

同委員会の保護戦略の大要は、下記の4点です。

  • 野生生物の棲息地の保全
  • 野生生物の保護、とりわけ、絶滅の危機に瀕している希少生物の保護
  • 保護・育成を促進するための法令の発布
  • 野生生物の環境保全についての意識改革と指導

同委員会は、過去数年間の活動によって目覚しい成果を達成しました。国立保護地区を画定し、15の保護地区が設定されましたが、その総面積は王国全土(225万平方キロメートル)の4%を占めています。また、野生生物の棲息地回復のため安全棲息地区を数カ所設定しました。こうした措置によって野生生物が従来の環境で棲息できるようになりましたが、こうした地区をさらに増やす計画が進められています。数年後には保護地区を103に増やす目標がすでに決定されており、そのうち56地区が陸棲生物の保護地区、47地区が水棲生物の保護地区になります。

同委員会はまた、野生生物の繁殖増進のため、次の3ヵ所のセンターを設立しました。

  •  ハーリド国立野生生物研究センター(在リヤード)
    1987年に設立され、故ハーリド・ビン・アブドルアジーズ国王がサマーマ農場に集めた大型動物の飼育、管理、繁殖をおこなっています。サマーマ農場は、故ハーリド国王の農場で、20種、600頭の動物が飼育されており、その中にはアラビア半島に棲息している貴重な種も含まれています。
  • 国立野生生物研究センター(在ターイフ)
  • ムハンマド・スディリー殿下オリックス研究センター(在カシーム)

これらのセンターは、サウディアラビア王国の砂漠に棲息している野生生物のうち激減し、絶滅の危機に瀕している種の育成と繁殖を目的としています。これらの生物には、のがん、サウディ・オリックス(エフリー)、山岳棲息オリックス(アドミー)、砂漠棲息オリックス(リーム)、アラビア野牛(ワディーヒー)などが含まれています。研究センターで育成された野生生物は自然繁殖のため、本来の棲息地である保護地区に放たれます。

また、同じように絶滅の危機に瀕している希少な水棲生物の保護もおこなわれています。こうした生物には、トカゲ魚(トカゲに似たエソ科の魚)や海亀が含まれています。同委員会の設立以前は気象・環境保護局がその保護を担当していました。同委員会は、王国の紅海とアラビア湾沿岸の領海に棲息しているこれら生物の保護のため、保護地域の設定を目的とした様々な研究を継続しています。

同委員会は、研究センターを通じて絶滅の危機に瀕している動物の増繁殖にあたっていますが、その中にはアラビア豹、ダチョウが含まれています。また、植物種銀行と園芸園を設立し、希少価値のある重要な植物を採取し、その保護に努力を注いでいます。

狩猟法に加え、野生生物保護地区法が1995年(イスラム暦1415年10月26日)に勅令として公布されたことによって、法的側面が整備されました。

同委員会は、野生生物の重要性とその保護に対する国民の意識改革と指導を行うため、様々な広報活動を含む大胆な計画を実施しています。また、国内、地域、国際レベルにおける世界環境デー、アラブ環境デーなどの祝日に、広報活動、意識覚醒キャンペーンを組織的に実行しています。

首都リヤードに本部を置く同委員会は、見学者用センターを設立し、一般の見学者や小中高生、大学生に、王国の自然環境と野生動植物に関する具体的な情報と写真を提供しています。

また同委員会は、3ヵ月毎に季刊誌「ワディーヒー(オリックスの一種)」を発行し、王国とアラブ諸国の野生生物に関する情報を提供しています。

 森林と放牧地

1978年(イスラム暦1398年)に森林・放牧法が公布され、農業・水資源省は、この法令に基づき、森林と放牧地の開発を目的としたプロジェクトに着手しました。その中には自然植物保護のための自然保護区の設立、雨水分配ラインの建設、崩壊の危機に瀕している放牧地の牧草播種などが含まれています。

また、植物が枯死した森林には王国の自然環境にふさわしい種の苗木を植えることによって森林の回復を促進しています。現在の王国の森林総面積は、約229万ヘクタールです。

農業・水資源省は、王国内に国立自然公園を造成しています。主なものには、アル・アハサー国立自然公園があります。同園は、砂の移動を防止するプロジェクトとしてスタートしましたが、植樹は、現在では、1,560ヘクタールに及んでいます。国は毎年、「植樹週間」と称する国家事業を全国レベルで実施しています。これは、国民の森林保護意識向上を目的としています。また、森林・放牧法は、木を伐採したり、引き抜いたり、生育を妨げたりする行為を禁じています。

内務省は、狩猟行為を監督していますが、狩猟法は、狩猟許可を得ていない動物の狩猟を禁じています。また、絶滅の危機に瀕している種の狩猟も禁じています。同省は、毎年、国の自然資源の保護を勘案しつつ、狩猟の許可時期と場所を指定しています。

都市・村落省は、市町村の自治体に代わって市街地、郊外地の公共公園、植物園、緑地の造成事業ならびに環境美化・衛生管理事業を実施しています。

王国はまた、廃棄物の循環・再利用を積極的におこなっています。廃棄物をリサイクルする肥料工場を3ヵ所建設し、年間約6万5,000トンの肥料を生産しています。さらに、年間約33万2,000トンの生産能力を持つ工場8ヵ所の建設が許可されています。一方、農場の灌漑用水を浄化し、配水管を用いて再利用する事業もおこなっています。リヤードと隣接地区の約300の農場においてこうした手法によって生産される農業用水は、一日当り22万立方メートルに達しています。

 国際協力

サウディアラビア王国は、環境保全と開発の分野における国際協力の重要性を認識し、環境保護のための地域レベル、国際レベルの一連の条約、国際団体、機関に加盟しています。王国は、「移動性野生動物種の保全に関する条約」(ボン条約)に1990年(イスラム暦1410年11月26日付勅令)に加盟しました。「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(ワシントン条約:CITES)には、1996年(イスラム暦1416年5月8日付勅令)に加盟しました。

また、王国の野生動物保護・育成国家委員会と国連との協力・調整(育成プログラム)を基軸にして、野生資源保護のための訓練センターが設立されました。同センターは、アラビア湾岸諸国とアラブ諸国から訓練生を受け入れています。

王国は今日、こうした国際機関において、以下に記載の重要なポストを占めるなど、指導的な役割を果たしています。それらは「移動性野生動物種保全条約」関連常設委員会委員長、「自然と自然資源保全世界連盟」副総裁、「中東・北アフリカ保全地区国際団体」副総裁などです。

アラブ諸国間で、1986年に設立された環境保護アラブ閣僚会議においても、王国の国防・航空相補佐官兼民間航空総視察監ファハド・ビン・アブドッラー・ビン・ムハンマド・アール・サウード殿下が事務局長に就任しています。

王国は、姉妹国であるアラビア湾岸諸国とともに1985年にマスカットで開催されたアラビア湾岸諸国首脳会議(GCCサミット)において環境保護に関する一般政策と原則を決議しました。王国は、地域レベルや国際レベルにおける数多くの会議に参加するとともに、ホスト国として、多岐にわたる環境問題解決を目指す国際会議、国際シンポジウムを開催しています。都市・村落省は、1997年9月21日から23日(イスラム暦1418年ジュマーダーウーラー月20日から22日)にわたり、リヤードで「開発とその環境に与える影響」と題した国際会議を開催しましたが、この会議には30以上の国々から約1,000人の代表が参加しました。同会議の開催中には、環境浄化国際展示会も開催されました。

 王国の環境保護努力に対する国際評価

サウディアラビア王国は、環境問題を専門とする地域及び国際機関から環境保護と野生動物育成における多大な功労を認められ、一連の賞を受賞しました。その主なものは下記の通りです。

 環境保護の成果に対する国連国際賞(1998年):

ジュベイル・ヤンブー王立委員会が、工業都市ジュベイルとヤンブーのインフラ基盤整備において環境に配慮した施設を建設したことが評価され、受賞したものです。こうした配慮により、これら両工業都市は、環境を破壊することなく発展する工業都市のモデルとなりました。

環境保護問題の専門家たちは、これら両工業都市の巨大な工業団地と巨大な建造物を、環境を保全しながら開発を持続できる見本と見なしています。

アラビア湾は、1991年、イラクの侵略行為に端を発したクウェイト解放戦争によって、石油汚染の被害を受けました。王国は、国際機関と協力してアラビア湾の浄化に努め、その成果と努力が国際社会から認められました。

王国は野生動物保護・育成国家委員会を代表して下記の数多くの賞を受賞しました。

  •  アラブ環境保護勲章(1991年、1996年)
  • 国際機関から地球というかけがえのない星の環境を守る10人の一人として、スルターン・ビン・アブドルアジーズ殿下が選出されました。
  • 国際自然保護と公演に関するファリード・バカルダ国際賞(1992年)
  • オーストラリアの国際環境保護バンカシア賞(1992年)
  • 国際ファーリド・バカルダ勲章(自然保全国際連盟)
  • 地球の友人国際協会からの感謝状(1991年)
  • 緑の平和国際協会からの感謝状(1992年)
  • 米ミネソタ州立大学からの感謝状(1992年)
  • その他、国際的な団体や機関からの賞

王国の国民と民間企業も、国内の野生生物保護において求められている役割を担うようになりました。こうした王国政府の努力に加え、野生生物保護と育成に貢献するため、サウディ野生生物保護基金が設立されました。