伝統料理

この原稿を書かなければいけないと思いながら、結局この原稿を最後に書くことになってしまった。なぜか。原稿を書くためには、おいしかった数々の料理のことを思い出したり、自分で撮った写真を見たりしなければいけない。独り暮らしで満足に食事をしていない私は、あの料理のことを思い出すたびによだれが出てきて、空腹になってしまった。もうこれは耐えられないことであった。しかしこの原稿も書かなければいけない。ああ、今すぐにでもあの時食べた料理を食べたい、という思いでいっぱいだ。

さて、まずここで私が紹介しなければいけないのは、何と言っても羊のカブサだろう。この料理で驚いたことは、まさか中東にまで来て日本で食べるような粘りっけのある米が食べられるとは思ってもいなかったということであるが、それよりも驚いたことは、まるまる一頭羊が料理されて出てきたことである。直径1mはあるであろう大皿に入って出てきたその料理を目にしたときは、まさに衝撃の一瞬であった。ここでは羊の場合を書いたが、羊の代わりに鳥肉であるときもある。

カブサ

カブサは、ライスと肉がいっしょになっているので、これだけでも一つの食事としては十分である。それでは、この地域の主食は一体どういうものなのだろうか。それは、ホブスといわれるものである。一見すると薄っぺらいピザ生地のように見えるが、実は袋状になっており、その中にサラダや他のおかずを入れて食べても良し、ホブスで包んで食べても良し、もちろんホブスだけ食べてもふっくらしており十分おいしい。ここでサラダと書いたが、その種類もたくさんあり、例えばタッブーラといって細かく刻んだきゅうりやトマトをオリーブオイルで混ぜたものなどがある。

また、ホンモスといってひよこ豆をペースト状にして同じくオリーブオイルをつけたものなどもある。

そして前菜の一種としては、フールというものもある。豆をゆでてつぶしたものにオリーブオイルをかけたものである。

色が一見するとカレーのようであるが全くそういう味はせず、とてもシンプルなものである。しかしこの料理の特徴は作り方ではないだろうか。とても大きな金属製の壷のようなものを火にかけて作り上げていく。

できたものを取り出すときは、柄の長いお玉のようなものでその壷のようなものの中からすくいとる。食事の場所にあのような巨大なものがあると一体何なんだろう、と不思議に思うが、手間ひまかけて作られた存在感ある食べ物である。

このようなホブスに関わってくる料理は毎食のように出てくるが、朝食といえばどういう食べ物があるのだろうか。

それの代表的なものがシャクシューカというものである。トマトを炒めたところに卵入れて焼くという非常にシンプルなものであるが、ボリュームもあっておいしい。一日をはじめるに当たって必要な栄養は全部摂ったという気分にさせるものである。

栄養を摂ったといえば、忘れてはいけないのがフルーツジュースだろう。実のところ、私たちがサウジで初めて口にしたのが、ホテルに着いたときに出てきたフルーツジュースであった。ジュースというものはそもそもああいうものを指すものなのだろう。グラスを持った瞬間その重量感が手を伝わってきた。そして飲むときも液体ではなくむしろ固形物を飲んでいるような感じさえした。あまりにもどろどろしているので、はじめは全て飲みきれないと言い出す人もいたが、慣れてしまえばあれを飲まなければジュースを飲んだ気にならないような感じさえした。日本の100%ジュースなんて水みたいなものだと思った。

ジュースになっている果物というのは、マンゴやイチゴ、オレンジにリンゴというものがあった。どれもがおいしい。しかもそれぞれが一種類のジュースで出てくるときもあるのだが、コックテールといっていろんな種類のジュースが混ざって出てくるときもある。

それぞれの種類が非常に濃厚なので、ただグラスに入れただけでは混ざりきらず、それそれの果物がそれぞれの層を作り、グラスを通して見るその縞模様はただのフルーツジュースとは思えないような美しさである。味だけでなく、飲む前の目も楽しませてくれる飲み物であった。このようなフルーツジュースを飲んでいるから、サウジ人は砂漠の厳しい気候の中でも生き延びてこられたのかな、と思ったものであった。

料理の話に戻そう。お好み焼きというと日本独特の料理のように思えるが、それに似た料理がサウジの伝統料理の中にもあった。それがムタッバクである。ちょっと甘めだが、生地に野菜が挟まれた状態で焼かれており、本当においしかった。

またターミーヤというコロッケに似た料理もある。コロッケといっても芋は使われておらず、その代わりにすりつぶされたソラマメが使われており、衣をつけずに揚げたものである。水気が少なくパサパサしているが、口に入れた時の香りと歯ごたえは、日本では余り経験でいないもので、これまたとてもおいしかった。

他にもクッパといって小さな肉団子のようなものを揚げたものや、サンブーサといって餃子のようなものを揚げたもの、ひき肉を葉っぱ巻いたマフシーという料理など、日本人にとってどこか懐かしさを感じさせるような料理も多くあった。

以上、と言っても私たちが口にしたもの全てを書ききったわけでは全然ないが、このようにサウジの伝統料理には非常にたくさんの種類がある。そして味も、すべてがとてもおいしい。おいしいといってもとても主観的な表現であるが、油っぽい料理もあれば、とてもさっぱりした料理もあり、それらがバランスよく出てくるので、サウジ料理はとても食べやすい料理であると言える。

このように、味もよし、種類も豊富なサウジ料理が日本では全く紹介されておらず、おまけにサウジ料理を出すレストランが一軒もないというのは残念で仕方がない。ああ、またまたサウジ料理に対する欲求不満がたまっていく。ここまで文章を書いたけどもう限界。これにてサウジ伝統料理紹介を終わります。サウジ料理、もう一度食べたい・・・。