日・サ間の文化・教育交流―その1 サウディ政府の活動

今日の日・サ間の経済関係は米国についで2位の貿易額でもわかるように大変緊密な関係になる。しかし、日・サ両国民間の相互理解は、地理的に離れ、歴史的関係が薄く、文化の相違、人的交流が少ないなどの理由でいまだ不充分と言えよう。こうしたことから相互理解の基盤となるお互いの文化・教育の交流はきわめて重要である。1997年11月に訪サした橋本総理は、ファハド国王との会談の中で、日・サ両国関係を政治と経済のみに限定せず、新たな協力分野として教育、環境、医療・科学技術、文化・スポーツを提言し、ファハド国王はこれに全面的な賛意を表明した。今後、両国がこれらを具体的に推進し、各分野での交流が一層盛んになることが期待される。以下、日・サ両国間の文化・教育面における交流の歴史を紹介する。

サウディアラビア館(P.176-1)

大阪万国博覧会に参加
1970年3月から6ヶ月間、万国博覧会が大阪で開催された。サウディアラビア館は、そのイスラーム色豊な内部展示で人々の目をひき、一般の日本人にサウディアラビア王国の存在を強く印象づけた。

邦訳クルアーン(コーラン)出版の援助
クルアーンはムスリムであるサウディアラビアの人たちにとって1番大切な経典であり、信仰のみならず、人間の生き方そのものについても記述している生活の手引書ともいえるものである。クルアーンの和訳本は数種類あったがほとんどのものが異教徒が英訳のクルアーンを使って和訳したものであった。

平成8年10月第5刷発行版(P.177-1)

1961年、日本人ムスリムの三田了一氏はクルアーンの邦訳のためマッカへ赴き数年間滞在した。そして三田氏は帰国後、1971年に邦訳を完成させ、翌年に日本で初めて原文アラビア語を並記した日亜対訳クルアーンとして世に出した。サウディアラビア政府の全面的な援助を受けているマッカの世界イスラーム連盟(ラービタ)はこの邦訳クルアーン出版事業に関し、三田氏のマッカ滞在期間中の援助、そして原文アラビア語一字一句の校閲、出版費用において惜しみない支援・協力を行った。また、この邦訳クルアーンを日本全国の主要図書館、イスラーム関係機関へ無料で配布した。三田氏のクルアーン邦訳は、その後日本ムスリム協会の会員によって改訂され、同協会より出版されている。

日本国内のイスラーム団体への支援
1952年に設立された日本ムスリム協会は、1968年に宗教法人として認可された日本で初めてのムスリムによる団体である。現在は約150名の会員がいるが、そのほとんどは日本人である。同協会は、イスラームの宣教、広報出版、信者の育成教育、宗教行事儀礼の勤行、海外イスラーム諸国との親善協力など幅広い活動を行っている。事務所を東京都渋谷区代々木に置いている。

一方、外国人ムスリムが中心となって、イスラミック・センタージャパンが1964年に東京に設立された。1980年に宗教法人として認可され、東京都世田谷区大原に事務所を置き、布教活動を行っている。約50人の会員のほとんどが外国人である。

サウディアラビア政府はこの両団体をはじめ他の日本国内のイスラーム機関に長年にわたり資金援助を行っている。また、宗教関係者を派遣し、日本におけるイスラーム布教に努力している。

新インスティテュート(P.178-1)

アラビック・イスラミック・インスティテュート・東京
1980年、サウディ政府はイスラームの布教とアラビア語の普及を目的としてリヤードのイマーム大学の分校としてアラビック・イスラミック・インスティテュート・東京を都内に開設し、同大学から数名の教師を日本に派遣した。その後、同校は旧サウディアラビア大使館内に移されたが、建物が古くなり建て直すため、1996年末に閉鎖された。1997年2月に始まった新築工事は、1998年7月に終了し、地上4階、地下2階の新学院校舎が完成した。一度に約1,000人の礼拝者を収容することができる当学院は、サウディアラビアとイスラーム文化を日本国民に紹介する拠点となるだろう。

GCC青少年フェスティバル
1985年9月19日から一週間、東京でGCC青少年フェスティバルが開催されファイサル・ビン・ファハド青年福祉庁長官を団長とするサウディ人を含む約400名のGCC6カ国の青少年が来日した。伝統的民族舞踏を上演したり、絵画・民族衣装・アンティーク・美術工芸品を展示して一般の人たちの興味を引いた。

スポーツ・チームの来日
1992年10月、広島で開催されたサッカーのアジア・カップ選手権大会にサウディ・ナショナルチームが参加し、準優勝を成し遂げた。サウディ・チーム団長としてスルターン・ビン・ファハド青年福祉庁副長官も来日した。

1995年11月、サウディアラビアを含むGCC諸国から青年卓球チームが来日し、日本チームと親善試合を行った。1997年3月には柔道チーム、12月には空手チームも来日して、日本チームと親善試合を行っている。

転載:「アブドルアジーズ王の生涯」
日本サウディアラビア協会出版