日本サウディアラビア友好ファハド基金

日・サ協会創立記念式典でスピーチするスルターン殿下(1960年) (P.184-1)

日本サウディアラビア協会は、サウディアラビアにいち早く進出したアラビア石油(株)の山下太郎社長が日・サ友好親睦の促進を目的として財界人に呼びかけ、1960年10月に設立された任意団体である。東京で盛大に行われた創立記念式典には、交通大臣スルターン殿下(現第二副首相兼国防・航空大臣)が出席した。

会員は日本を代表するサウディアラビア進出企業を中心に、1998年12月現在、81社で、会長は小長啓一、アラビア石油(株)社長である。

名誉会長は歴代の駐日サウディアラビア大使で、会長には歴代のアラビア石油(株)の会長もしくは社長が就任し、事務局はアラビア石油(株)内に設置されている。

主な活動は隔月ごとの協会報の発行、アラブ・イスラーム関連書籍の出版、アラビア語講座・アラビア習字の開講(4クラスで毎年約120名が受講)、会員・一般へのサウディアラビア、イスラームに関する正確な情報提供サービスなどである。

1981年12月、日・サ協会は創立20周年記念式典を東京で開催した。同式典において、サウディ政府代表として出席したアンガリー労働・社会問題大臣(現ファハド国王特別顧問)は、長年の日・サ協会の活動を評価したファハド皇太子(現国王)からの寄付金50万ドルを水野会長(当時)に手交した。この寄付金と会員企業からの寄付金をあわせて“日本サウディアラビア友好ファハド基金”が設立された。その後、日・サ協会は同基金を原資として、アラブ・イスラーム関連書籍の出版事業を行い、会員企業ならびに日本全国の主要図書館や教育機関へ寄贈している。参考までに同基金の出版物を紹介する。

“サヒーフ・ムスリム”(1~3巻)邦訳本(小笠原良治・飯森喜助・磯崎定基役1987~89発行)
イラン生まれのイスラーム学者ムスリム(817~875年)が著した最も信頼されているハディース集(預言者ムハンマドの言行録を集大成したもの)のひとつで、日本初のハディース邦訳本。ハディースはムスリムにとってはクルアーンに次ぐ重要な本で、信仰のみならず日常生活の規範についても記載されている。

“預言者の娘たち”(アーイシャ・アブドッラハマーン著、徳増輝子約1988年)
エジプトの現代歴史学者アーイシャ女史が古典資料をもとに預言者ムハンマドの人間味あふれる父親としての娘たちへの愛情を中心に描いた本。同女史が著した“預言者の妻たち”の続編。

“シャリーアによる統治”(イブン・タイミーヤ著、湯川武・中田考訳1991年)
シリア生まれのイブン・タイミーヤ(1263~1328年)はイスラームの根本に立ち戻り、イスラーム法(シャリーア)が遵守される社会の再現を力説した。そして、その思想はサウディアラビアのサラフィー運動を推進したムハンマド・ビン・アブドルワッハーブに大きな影響を与えた。そのイブン・タイミーヤがイスラーム法の立場から著した本。

“預言者伝”(ムスタファ・スィバーイー著、中田考訳1993年)
シリア生まれのイスラーム学者、ムスタファ・スィバーイー(1915~1964年)が預言者ムハンマドの生涯を色々な観点からとらえて著作した、権威ある預言者伝のひとつ。

“正統四カリフ伝”(上・下巻)(柏原良英、森伸生著1994、1996年)
預言者ムハンマドの死後(632年)、イスラーム共同体(ウンマ)を統治し、世界に向かって啓示を広めウンマを拡大させた正統カリフ(後継者)であるアブ―バクル、ウマル、ウスマーン、アリーの4人の生涯を著した本。

上述の書籍はいずれも日本の中東・イスラーム研究者にとって貴重な文献として、高く評価されている。

書籍紹介 (P.186-1)

転載:「アブドルアジーズ王の生涯」
日本サウディアラビア協会出版